梅雨がどうやら開けそうだ。蒸し暑いが曇り空で時折陽光が射す。
家の給湯に使う灯油タンクが空になりそうだった。それで町まで買いに出た。
灯油販売所はスタンドかホームセンターだ。どちらも町にしかないのだ。ぅ、ぅ、ぅ![]()
20Lのポリタンクを2個 軽トラに積んで山を下りた。
谷川沿いの山道だ。くねくねと曲がっている。すぐ横は崖なんだよ。
助手席に乗った婆さんが口うるさく言う。「速度が出過ぎている」「ブレーキを踏んで」とうるさい。![]()
あ”あ”あっ! カーブだ。急いでハンドルを回す。右だ!今度は左カーブだ。手が思うように回せない。
崖が目の前に迫る。急ブレーキを踏む。ギギギギー・・・・「ぎゃああ”あ”あ”」と悲鳴が聞こえる。
「うるさいぞ、婆さん!」と声を上げるわたし。
今度は長い下り坂の右カーブに差し掛かった。下りでスピードが出始めていた。![]()
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「大丈夫だ、ブレーキを踏めば減速出来るわ~!」 と軽く考えていた私。
余裕でブレーキを踏んだ。だ、だ、だ。つもりであった。
踏んでいたのは右側のペダル。そう アクセルだった。![]()
車が急加速してすっ飛んだ。ぎゃああああ・・・と山にこだまする爺いと婆あの絶叫音。![]()
崖際の道で急停止した軽トラ。婆さんは口から泡を吹き 私は心臓が停止していた。![]()
やっとのことで町のホームセンターに着いた。
灯油だけでなく 歯ブラシや歯磨粉、殺虫剤やら農薬やらも一緒に買って家路についた。
村に入って帰り道、まだ8時前なのに車一台も 人っ子ひとりにも出会わなかった。
過疎の村、人口よりか猪の数の方が多い村。誰か移住して来てくれっちゃ!![]()