台風11号の直撃を受けた爺ちゃんの住む地域。
夜が明けてその被害が徐々に明らかになって来た。
柿の木が裂けて折れていた。生木を裂く凄さ、しかもモミジの木が根こそぎ倒れていた。
真夜中に暴風雨だったのだが一瞬耳を疑う轟音が聞こえた。ものすごい音だった。ゴオオーというまるでジェット機が頭上を飛ぶような音、いや墜ちて来たかと思うほどの音が何回も響いた。
嵐が来ても今までこんな音は聞いたことがなかった。思わず窓の外を眺めた爺ちゃんだった。しかし真っ暗闇で何も見えなかった。
一夜明け村中を見て回った。するとビニールハウスが跡形もなく飛び散っていたし、イチヂク農園ではイチヂクの木が全部向きが変わっていた。すべての木が風下に押し曲げられていたのだ。
トウモロコシを始め丈のある植物は全て倒伏していた。
むかし聞いたことがある。そう 旋風というやつだ。今で言う竜巻に似た種類の暴風だ。
爺ちゃんが大切に育てていたキュウリ、トマト、お花も全部倒れていた。
お昼から小雨の中をひとつひとつ大切に持ち上げ、支柱を建てくくり付けた。
キュウリもトマトも唐辛子も、多くの実が飛び散り散乱していた。
何日も大切に愛しんで育てたのに、一瞬の暴風雨でこの有様。悔しいが天災には勝てない。
幸いな事に他の地域でも土石流などの大災害は起きなかったようだ。
不幸中の幸いと思うしかないね。![]()