マイナンバー贈収賄 厚労省が監査本部開催
2015年10月21日 19:49
マイナンバーに関連する贈収賄事件で室長補佐が逮捕された厚労省は21日、事件の原因究明と再発防止策を検討する監察本部を開催した。外部の弁護士らで作る監察本部では検証チームを設置し、事業の競争入札の方法に問題がなかったかなどを検証するという。
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マイナンバーに関連する贈収賄事件で職員が逮捕された厚労省は、事件の原因究明と再発防止策を検討する監察本部を開催した。
21日の会議の冒頭、監察本部長の塩崎厚労相は「徹底した事実の検証と再発防止策の検討を行わなければいけない。一刻も早く国民の信頼を取り戻さなければいけない」と述べた。
外部の弁護士らで作る監察本部では、検証チームを設置し、逮捕された室長補佐の中安一幸容疑者と関わりがあった職員へのヒアリングなどを行い、勤務状況の管理や事業の競争入札の方法に問題がなかったのかなどを検証するという。
報告書の取りまとめの時期については、警視庁の捜査状況次第だとしている。
医療&ITに精通した「異能のノンキャリ」 派手なブランド服で身を固め…
警視庁に出頭する厚労省情報政策担当参事官室の中安一幸室長補佐=13日、さいたま市(橋本昌宗撮影)
収賄容疑で逮捕された中安一幸容疑者は、ノンキャリアながら民間の医療関係者やIT関係者に太いパイプを持ち、その服装や言動などから「異能の官僚」とも呼ばれた。
13日朝、ウエーブのかかった髪に鼻まで下がった眼鏡。白いジャケットで警視庁に出頭する中安容疑者の姿は、およそ一般的な官僚のイメージとはかけはなれた姿だった。
中安容疑者は高校卒業後の平成3年、国立病院の事務官として採用され、17年に係長として厚生労働省の本省に転任。19年以降は部署間を大きく異動することはなく、システムの導入や企画立案を担当した。医療分野のIT化の旗振り役として、政府の医療情報政策を主導してきた。
「情報を電子化することで将来の医療の質は間違いなく高まるはず」。雑誌のインタビューにもこう持論を展開した。大学の客員准教授を務めるほか、贈賄側のIT関連会社なども入っていた産官学による研究団体にも所属していた。
中安容疑者と一緒にシンポジウムのパネリストを務めたことがあるIT業界の関係者は「自分の考えを持って明快に説明していくことから業界内にファンも多かった」と振り返り、「厚労省の中でも医療とITに関する一番の専門家と聞いていたが、まさかこんなことになるとは」と話す。
だが、省内では別の側面も見せていたようだ
ある厚労省職員は、中安容疑者がワインレッドのシャツに黒のネクタイ、くるぶしまでの長いトレンチコートと高級ブランドで身を固めた姿で省内を歩いていたことを覚えている。「金回りがいい人だな」。この職員はそう感じたという。
「外にもパイプがあるので、いつでも役所は辞められる」「自分に近い国会議員もたくさんいるし、人脈は持っている」。同省の中堅官僚によると、中安容疑者は口癖のように周囲にそう吹聴。「勉強家だが、野心家でもあった」と振り返る。
情報技術にも詳しく、マイナンバー制度に消極的な上司に対しても、積極活用を強く主張していた中安容疑者。一緒に数回、仕事をしたことがあるという厚労省職員は「能力が高く、代わりの人材がいないからずっと同じ部署に置かれていたのだろう。上司も彼があまりにベテランで、逆らえない雰囲気があったのではないか」と推測している