豪ドル
RBA(豪中銀)は2月17-18日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を4.35%から4.10%へと引き下げました。RBAが利下げしたのは、20年11月以来4年3カ月ぶりです。
RBAの声明やブロック総裁の会見では追加利下げに慎重な姿勢が示されました。
RBAは声明で「(豪州の)インフレ率が2~3%の目標レンジの中間点(2.5%)に向かって持続的に推移しているとの確信が深まっている」としました。声明はその一方で、堅調な労働市場などインフレの上振れリスクは残っているとし、「金融緩和が早過ぎれば、ディスインフレ(インフレ率が低下していく状況)が停滞し、インフレ率が目標レンジの中間点を上回る水準に落ち着くおそれがある」と指摘。「さらなる政策緩和(追加利下げ)の見通しについては慎重だ」としました。
ブロック総裁は会合後の会見で「市場に織り込まれている追加利下げは保証されていない」、「市場の織り込みは非現実的だ」などと述べ、市場の利下げ観測をけん制しました。
RBAがタカ派的な姿勢を示しているにも関わらず、市場は引き続き“早ければ5月に追加利下げが行われる”との見方が優勢です。
豪州のCPI(消費者物価指数)や雇用統計など今後発表される経済指標の結果を受け、RBAの追加利下げ観測が強まれば、豪ドルにとってマイナスになりそうです。その場合、豪ドル/円や豪ドル/米ドルは軟調に推移する可能性があります。
豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフが強まることは、豪ドルにとってマイナスです。
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【豪ドル/NZドル】
これまではRBNZ(NZ中銀)が積極的な利下げを実施する一方で、RBAは政策金利を据え置いてきました。両中銀の金融政策の方向性には違いがありました。
しかし、RBAは2月の会合で利下げを実施し、RBNZは利下げペースを今後落とす可能性を示しました(*RBNZの金融政策の詳細はNZドルの項をご参照ください)。両中銀の金融政策面からの豪ドル/NZドルの上昇圧力は今後緩和すると考えられます。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は2月19日の政策会合で0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を4.25%から3.75%へと引き下げました。RBNZの利下げは4会合連続、0.50%の利下げは3会合連続です。
RBNZは声明で「経済状況が引き続き予想通りに進展すれば、25年を通じて政策金利をさらに引き下げる余地がある」とし、追加利下げを示唆。その一方でオア総裁の会見では、利下げペースは今後鈍化する可能性が示されました。オア総裁は会見で「今年7月頃までに0.50%の追加利下げを予想している。追加利下げは0.25%ずつの2回で、4月と5月の可能性が高い」と述べました。
RBNZによる積極的な利下げがNZドルに対する下押し圧力となってきました。RBNZが今後利下げ幅を0.25%へと縮小する可能性を示したことで、金融政策面からのNZドルへの下押し圧力は緩和する可能性があります。
NZドル/円は日銀の、NZドル/米ドルはFRBの金融政策にも影響を受けそうです。日銀の早期追加利上げ観測が強まる、FRBの追加利下げ観測が後退する場合、NZドル/円やNZドル/米ドルは上値が重い展開になるかもしれません。
NZドルは豪ドルと同様、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフが強まることは、NZドルにとってマイナスです。
カナダドル
トランプ米政権による対カナダ関税がどうなるのか?がカナダドルの動向に大きな影響を与えそうです。トランプ政権はカナダからの輸入品に対して25%(原油などエネルギーの税率は10%)の関税を3月4日に発動する予定です。
予定通りに対カナダ関税が発動されれば、カナダドル安圧力が生じると考えられます。カナダ経済は対米依存度が高く、同国の輸出全体のうちおよそ4分の3が米国向けです。高率の対カナダ関税はカナダ経済に大きな打撃を与えると考えられるからです。
トランプ政権が対カナダ関税の発動を再び延期すれば、短期的にはカナダドル高圧力が生じて、米ドル/カナダドルは軟調に推移し、カナダドル/円は堅調に推移しそうです。
BOC(カナダ中銀)は1月29日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を3.25%から3.00%へと引き下げました。BOCが利下げしたのは6会合連続です。
今後、BOCの追加利下げのハードルは高くなるかもしれません。BOCは24年6月以降の利下げ(合計2.00%)について「大幅」との認識を示しています。また、政策金利はBOCの推計する中立金利(2.25~3.25%)の中間値である2.75%に接近しました。BOCの利下げ停止が市場で今後意識されれば、BOCの金融政策面からのカナダドル安圧力は緩和しそうです。
カナダでは与党・自由党の党首選が3月9日に行われる予定です。カナダの新首相がどのような経済政策を実施するのか、また関税をめぐる新首相とトランプ大統領との交渉が注目されます。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は24年12月と25年1月の2会合連続で利下げを行いました(利下げ幅はいずれも2.50%)。
トルコではインフレ率が鈍化傾向にあります。24年5月に前年比75.45%だったCPI(消費者物価指数)上昇率は、25年1月に42.12%へと鈍化しました。今後もCPI上昇率の鈍化が続けば、TCMBは利下げを継続すると考えられます。その場合、トルコリラは上値が重い展開になりそうです。
TCMBの金融政策に関するエルドアン大統領の言動には注意が必要かもしれません。エルドアン大統領が23年6月の経済チーム刷新(財務相とTCMB総裁が交代)前のように金融政策に干渉する場合、トルコリラには下落圧力が加わる可能性があります。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は25年1月の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を7.75%から7.50%へと引き下げました。SARBの利下げは3会合連続で、利下げ幅はいずれも0.25%です。
SARBは追加利下げに慎重になるかもしれません。1月会合時の声明では「南アフリカのインフレ率は25年前半を通じてSARBの目標レンジ(3~6%)の下半分にとどまる可能性が高い」との見方を示しました。声明では一方で、「外部環境による重大なリスクにより、中期的な見通しは通常よりも不確実性が高い」、「インフレ見通しに対するリスクは上振れ方向」との認識が示されました。
1月の会合で0.25%利下げするとの決定は4対2で、決定に反対した2人は政策金利の据え置きを支持しました。
今後発表される南アフリカのCPI(消費者物価指数)などによってSARBの追加利下げ観測が市場で後退する場合、南アフリカランドにとってプラスになりそう。南アフリカランド/円は底堅く推移する可能性があります。
メキシコペソ
カナダドルと同様、トランプ米政権による対メキシコ関税がどうなるのか?がメキシコペソの動向に大きな影響を与えそうです。トランプ政権はメキシコからの輸入品に対して25%の関税を3月4日に発動する予定です。対メキシコ関税の発動が再び延期されれば、メキシコペソ/円は短期的に堅調に推移しそうです。
BOM(メキシコ中銀)の金融政策にも注目です。BOMは2月6日の会合で0.50%利下げすることを決定。政策金利を10.00%から9.50%へと引き下げました。BOMの利下げは24年3月以降で6回目。利下げ幅はこれまでの0.25%から拡大されました。
25年2月会合の声明では「インフレ環境が利下げサイクルの継続を可能にすると予想している」とし、「同程度の調整を検討する可能性がある」とされました。次回3月27日の会合でも0.50%の利下げが行われる可能性があります。BOMが追加利下げを行うことは、メキシコペソにとってマイナスと考えられます。
ただ、金融政策面から考えれば、メキシコペソ/円はそれほど下落しない可能性があります。日銀と比べてBOMの政策金利の水準がかなり高い状況に大きな変化はないと考えられるからです。
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