豪ドル
RBA(豪中銀)は25年2月と5月の政策会合でいずれも0.25%(合計0.50%)の利下げを行いました。
豪州の1-3月期CPI(消費者物価指数)は前年比2.4%、RBAがコアインフレ指標として注視するCPIトリム平均値は同2.9%でした。トリム平均値は24年10-12月期の3.3%から上昇率が鈍化し、RBAのインフレ目標レンジである2~3%におよそ3年ぶりに収まりました。
OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBAは26年前半にかけて4回(合計1.00%)の利下げを行うとの見方が有力です(6/27時点)。RBAの利下げ観測が豪ドルのマイナス材料と考えられます。
トランプ政権の通商政策、特に対中関税がどうなるのかにも注目です。8月中旬にはトランプ政権による対中相互関税の上乗せ分(24%)の発動停止期限を迎えます。豪州は中国を最大の輸出先とするため、上乗せ分が実際に発動されるなどして米中貿易摩擦が激化した場合、豪州経済を下押しする要因になり得るとともに豪ドルのマイナス材料になる可能性があります。
豪ドルはまた、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)が強まる場合、豪ドルに対して下押し圧力が生じる可能性があります。
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【豪ドル/NZドル】
市場では、今後RBAの方がRBNZ(NZ中銀)よりも大幅に利下げするとの見方が有力です(*RBNZの金融政策の詳細はNZドルの項をご参照ください)。市場の見通しどおりに両中銀の政策金利が推移するようなら、豪ドル/NZドルは上値が重い展開になりそうです。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は24年8月から25年5月の政策会合まで6回連続で利下げを実施。一連の利下げ開始前に5.50%だった政策金利は3.25%まで低下しました。
RBNZの利下げは近く停止される可能性があります。0.25%利下げすることが決定された25年5月の会合では、政策金利を据え置くことも検討されました。また、ホークスビー総裁は会合後の会見で、RBNZの政策金利は中立的な領域にあるとの認識を示し、また今後の利下げについて問われると「われわれは、かなりの仕事(大幅な利下げ)を行ってきた」と述べました。
市場では8月に0.25%の追加利下げが実施されて、それをもってRBNZの利下げは打ち止めとの観測があります。実際にその通りになれば、金融政策面からNZドルはサポートされやすいと考えられます。
FRB(米連邦準備制度理事会)が複数回の追加利下げを行う場合、NZドル/米ドルは堅調に推移する可能性があります。
NZドルは豪ドルと同様、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。リスクオフが強まる場合、NZドルは下押しするかもしれません。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は24年6月から25年3月まで7会合連続で利下げを実施。その後4月と6月の会合では政策金利を据え置きました。
BOCは金融政策運営において引き続き難しい舵取りを迫られると考えられます。 トランプ政権の関税によってカナダ経済には下押し圧力が加わる可能性があります。その一方で、カナダのCPI(消費者物価指数)には今後上昇圧力が加わるかもしれません。
BOCは24年6月以降、合計2.25%の利下げを行いました(一連の利下げ開始前に5.00%だった政策金利は2.75%まで低下しました)。これまでの利下げの効果が今後さらに出てくると考えられることもあり、市場ではBOCの利下げサイクルは終わりに近づいていると予想しているようです。OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場では12月末までにあと1回(0.25%)の利下げが行われるとの見方が有力です。BOCの金融政策面からみれば、カナダドル安圧力は生じにくいと考えられます。
FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ回数がBOCよりも多くなるようなら、米ドル/カナダドルは軟調に推移しそうです。
トランプ政権による通商政策にも注目です。トランプ大統領は6月27日、カナダのデジタルサービス税導入を理由に国との貿易協議を打ち切ると表明しました。カナダは同29日にデジタルサービス税を撤回。それを受けて両国は貿易協議を再開することで合意しました。カナダ経済は対米依存度が高く、同国の輸出全体のおよそ4分の3が米国向けです。そのため、トランプ政権の通商政策によっては、カナダ経済は大きな打撃を受ける可能性があります。
カナダドル/円については、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)の影響を受けやすいかもしれません。リスクオフが強まって円が全般的に堅調に推移すれば、カナダドル/円は上値が重い展開になりそうです。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は6月19日の政策会合で金融政策の現状維持を決定。主要政策金利の1週間物レポ金利を46.00%、翌日物貸出金利を49.00%、翌日物借入金利を44.50%に据え置きました。市場では金利コリドー(※)の上限である翌日物貸出金利を引き下げるとの観測がありましたが、据え置かれました。
(※)TCMBは主要政策金利の1週間物レポ金利を中心に、上限の翌日物貸出金利と下限の翌日物借入金利の範囲(金利コリドー)内に市場金利を誘導しています。
TCMBは声明で、「インフレの基調的なトレンドは5月に低下した。先行指標は、この低下が6月も続くことを示唆している」、「(トルコの)4-6月期のデータは、内需の減速を示している」と指摘。「インフレ率の持続的な鈍化によって物価の安定が達成されるまで、引き締め的な金融政策スタンスを維持する」との方針を改めて示しました。ただし、インフレ率の大幅かつ持続的な悪化が予想される場合、前回5月会合時は「金融政策スタンスを引き締める」でしたが、6月会合では「あらゆる政策手段を活用する」へと変わり、必ずしも利上げを意味しないものになりました。
トルコのCPI(消費者物価指数)上昇率は24年5月の前年比75.45%から鈍化傾向にあり、25年5月は同35.41%と21年11月以来の低い伸びでした。TCMBはいずれ利下げを行うとみられます。利下げのペース次第ではトルコリラに対して下押し圧力が生じるかもしれません。
南アフリカランド
トランプ米政権の通商政策のゆくえが南アフリカランドに影響を与えそうです。4月にトランプ米大統領が発表した相互関税では、南アフリカの関税率は30%とされました(基本税率10%+上乗せ分20%)。今後、上乗せ分が適用されることになれば、南アフリカ景気をめぐる懸念が市場で強まると考えられます。その場合には、南アフリカランドに対して下押し圧力が生じそうです。
SARB(南アフリカ中銀)の金融政策にも注目です。SARBは24年9月から25年1月まで3会合連続で利下げを実施(利下げ幅はいずれも0.25%)。25年3月の会合では政策金利を据え置いたものの、5月の会合で再び0.25%の利下げを行いました。SARBが今後も利下げを継続するようなら、南アフリカランドは上値が重い展開になる可能性があります。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は6月26日に政策会合を開き、0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を8.50%から8.00%へと引き下げました。利下げは8会合連続で、24年3月以降で9回目。0.50%幅の利下げは4会合連続です。
前回5月の会合では5人の政策メンバー全員が0.50%利下げすることに賛成しました。しかし6月の会合は4対1で決定され、ヒース副総裁は政策金利の据え置きを支持しました。
6月会合の声明では、先行きの金融政策に関する文言が修正されました。2月・3月・5月に0.50%の利下げを行った際は「今後も金融政策スタンスの調整を継続し、同程度の規模での調整を検討する可能性がある」でした。それが「政策金利のさらなる調整を検討する」となりました。今後利下げが行われるとしてもその幅が縮小されるようなら、メキシコペソはそれほど下落しないと考えられます。
トランプ米政権の通商政策にも注目です。メキシコは輸出の約8割が米国向けと対米依存度が高いため、トランプ政権の通商政策はメキシコ景気に大きな影響を与えます。仮に今後、トランプ政権とメキシコのシェインバウム政権の交渉によって対メキシコ関税が軽減されるなら、メキシコペソにとってプラス材料になりそうです。
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