資源・新興国通貨の2025年12月までの展望

著者:八代和也
投稿:2025/07/29 13:14

豪ドル

RBA(豪中銀)は25年2月と5月の政策会合でそれぞれ0.25%の利下げを実施しました(4月の会合は政策金利を据え置き)。

7月7-8日の会合で政策金利は4.35%に据え置かれたものの、その決定は6対3でした。反対した3人は利下げを主張したとみられます。そのことについてブロックRBA総裁は、会合後の会見で「意見の相違は政策金利の方向ではなく、追加利下げのタイミングだ」と述べました。RBAは早ければ次回8月11-12日の会合で利下げを行うと考えられます。

OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBAは8月の会合で0.25%の利下げを行うとの見方が有力。その後、26年2月までにさらに2回(合計0.50%)利下げするとの見方が優勢です。今後発表される豪州の経済指標の結果によってRBAの追加利下げ観測が高まる場合、豪ドルのマイナス材料になりそうです。

トランプ政権の通商政策、特に対中関税がどうなるのかにも注目です。豪州は中国を主力輸出先とするため、豪経済は中国景気の動向に影響を受けやすい面があります。今後、米中の貿易摩擦が緩和するようなら豪ドルの下支え要因になる可能性があります。

日銀の追加利上げをめぐる市場の観測や日本の政治情勢次第では、円に対して下押し圧力が加わるかもしれません。その場合、RBAの追加利下げ観測が高まっても、豪ドル/円は底堅く推移することも考えられます。

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【豪ドル/NZドル】
市場では、今後の利下げ幅はRBAの方がRBNZ(NZ中銀)よりも大きくなるとの見方が優勢です(*RBNZの金融政策の詳細はNZドルの項をご参照ください)。市場の見通しどおりに両中銀の政策金利が推移するようなら、豪ドル/NZドルは上値が重い展開になりそうです。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は7月9日の政策会合で政策金利を3.25%に据え置くことを決定。24年8月に開始した利下げサイクルをいったん停止しました。

ただ、7月会合のRBNZ声明では「中期的なインフレ圧力が予想どおり緩和し続ければ、政策金利をさらに引き下げると予想している」とされました。RBNZは次回8月20日の会合で再び利下げする可能性があります。

OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場では8月会合で0.25%の利下げが行われるとの見方が有力。その後は、さらに1回利下げが行われてそれをもって利下げサイクルは終了との見方が優勢です

仮に8月会合で利下げが行われたとしても、それ以降の利下げ観測が市場で後退すれば、NZドルは金融政策面からサポートされやすくなるかもしれません。仮にFRB(米連邦準備制度理事会)が複数回の追加利下げを行う場合、NZドル/米ドルは堅調に推移することも考えられます。

NZは豪州と同様、中国を主力輸出先とします。米中貿易摩擦が緩和すれば、NZドルにとってプラス材料になりそうです。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は24年6月から25年3月まで7会合連続で利下げを実施。その後4月と6月の会合では政策金利を据え置きました。市場では7月30日の会合でも政策金利は据え置かれると予想されています。

BOCは金融政策運営において引き続き難しい舵取りを迫られると考えられます。 トランプ政権の関税によってカナダの輸出品への需要が減少し、カナダ経済には下押し圧力が加わる可能性があります。その一方で、カナダのCPI(消費者物価指数)には上昇圧力が加わるかもしれません。

BOCは24年6月以降、合計2.25%の利下げを行いました。これまでの利下げの効果が今後さらに出てくるとみられることから、市場ではBOCの利下げサイクルは終わりに近いとの観測があります。仮にそのとおりなら、BOCの金融政策面からのカナダドル安圧力は生じにくいと考えられます。

FRB(米連邦準備制度理事会)が今後利下げを再開する場合、米ドル/カナダドルは軟調に推移する可能性があります。

カナダドルはトランプ政権による通商政策にも影響を受けそうです。トランプ大統領は7月10日、「カナダからの輸入品に35%の関税を8月1日から課す」と表明しました。トランプ政権はカナダに対し、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)準拠品を除いて原則25%の関税を3月から課しており、35%はそれに10%上乗せしたものです。トランプ政権が対カナダ関税の引き上げを実行した場合、カナダドルにとってマイナス材料になるかもしれません。

メキシコペソ

BOC(カナダ中銀)は24年6月から25年3月まで7会合連続で利下げを実施。その後4月と6月の会合では政策金利を据え置きました。市場では7月30日の会合でも政策金利は据え置かれると予想されています。

BOCは金融政策運営において引き続き難しい舵取りを迫られると考えられます。 トランプ政権の関税によってカナダの輸出品への需要が減少し、カナダ経済には下押し圧力が加わる可能性があります。その一方で、カナダのCPI(消費者物価指数)には上昇圧力が加わるかもしれません。

BOCは24年6月以降、合計2.25%の利下げを行いました。これまでの利下げの効果が今後さらに出てくるとみられることから、市場ではBOCの利下げサイクルは終わりに近いとの観測があります。仮にそのとおりなら、BOCの金融政策面からのカナダドル安圧力は生じにくいと考えられます。

FRB(米連邦準備制度理事会)が今後利下げを再開する場合、米ドル/カナダドルは軟調に推移する可能性があります。

カナダドルはトランプ政権による通商政策にも影響を受けそうです。トランプ大統領は7月10日、「カナダからの輸入品に35%の関税を8月1日から課す」と表明しました。トランプ政権はカナダに対し、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)準拠品を除いて原則25%の関税を3月から課しており、35%はそれに10%上乗せしたものです。トランプ政権が対カナダ関税の引き上げを実行した場合、カナダドルにとってマイナス材料になるかもしれません。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想