明日の株式相場に向けて=AIトレード凌駕する中期逆張り有望株
きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比52円安の5万0602円と反落。案の定というべきか先物を絡めた揺さぶりが顕在化した。日経平均は今年4月初旬の急落後、ほぼ一本調子の強烈な上昇トレンドを形成してきたこともあって、「SQ週の魔の水曜日」という言葉も最近はあまり聞かれなくなっていた。だが、きょうはFOMC待ちで凪状態が予想されたなか、取引時間中は想定を外れ上下に派手な振幅をみせた。大山鳴動して鼠一匹、終値は結局50円あまりの下げにとどまったが、風物詩的なSQに絡む仕掛けに久々に遭遇した感もある。振り返って前日の東京市場では、トランプ米政権のエヌビディア製AI半導体「H200」の対中輸出にゴーサインが出たことで、半導体セクターに追い風が吹いた。アドバンテスト<6857.T>やソフトバンクグループ<9984.T>といった関連銘柄は当然買われる展開が想定されたのだが、しかし実際はディスコ<6146.T>やレーザーテック<6920.T>が快調に上値を伸ばすのを横目に、アドテスト、ソフトバンクGともに漬物石が乗っかったような重い値動きに終始した。日経平均寄与度が図抜けて高い両銘柄に静かにしていてもらいたいのは誰かと言えば、メジャーSQに絡む先物やオプションでショートポジションをとっている機関投資家であることはいうまでもない。こうしたケースでは両銘柄ともSQ通過後に仕切り直しで買い戻される可能性もあり、むしろ来週以降の動きは注目といえる。
ショート筋が狙う下限ラインとして意識される5万円大台割れは、アドテストとソフトバンクGが崩れない限り難しい。きょうは朝方に半導体の主力銘柄が頑強な展開でスタートし、日経平均は一時450円あまりの上昇をみせ5万1000円台に足を踏み入れたが、その後は急斜面を滑り落ちるように急ピッチで値を消し、一番深いところで320円強の下落となった。SQ絡みの水面下の鍔迫り合い(つばぜりあい)は激しく、取引終盤は再び下げ幅を縮小した。
もっともきょうはプライム市場の値上がり銘柄数が全体の6割強を占めた。前日は真逆で、日経平均は小幅に高くTOPIXもプラス圏で着地したが、個別株の6割強が下落していた。主力株が高ければ中小型株は軟調で、主力株が利食いモードにある時は中小型株に資金が回るという構図だが、きょうは後者のパターンであった。売買代金の上位10傑をみるとすべて株価は下落している。当然ながら内訳はAI・半導体関連が多くを占めているが、この中には三菱重工業<7011.T>やサンリオ<8136.T>も含まれる。
FOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見は日本時間あす未明に予定されている。0.25%の利下げはほぼ確実視されているが、マーケットの関心はフォワードガイダンスに向いている。つまりドットチャートとパウエル氏の発言内容の方に関心が高く、日本時間早朝にあたる米国株市場の終盤は、AIアルゴリズムが作動してイベントドリブンによる上下動が見込まれる。これが東京市場にも伝播することになる。
AIトレードが闊歩するなか、個別株戦略についても今の時期は短期で結果を求めると逆目を引かされるケースが少なくない。「相場の地合いが悪くなるとAIは短期筋の思惑の逆に動いて保有する株を剥がしにくる」(ネット証券系ストラテジスト)という指摘もある。これに対抗しないために、時間軸をずらして中期投資に切り替えるのもひとつの手だ。例えば、貸株市場を通じたショートが積み上がった銘柄で、北海道電力<9509.T>などはどこかのタイミングで買い戻しが作動して噴き上げる可能性がある。泊原発の再稼働(3号機)にメドが立ち、ラピダス効果による電力需要の拡大を収益恩恵として取り込むシナリオが動き出した。今期減益見通しについては既に織り込み済みである一方、DOE導入で増配を計画しているにもかかわらずPBRがわずかに0.6倍台と、中期的にこの水準で放置され続けることは考えにくい。このほか、前述したきょうの売買代金上位10傑銘柄の一つに含まれるサンリオなども、任天堂<7974.T>と共に日本を代表するIPビジネスのフラッグシップ銘柄であることに変わりはない。足もとの日中関係の悪化を嫌気して投げてしまうほど存在の軽い銘柄なのかどうか。その答えは明らかで、5000円近辺は中期スタンスで拾っておきたい銘柄といえる。
あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、10~12月期法人企業景気予測調査がいずれも朝方取引開始前に発表される。前場取引終盤に開示される11月のオフィス空室率にも関心が高い。20年物国債の入札も行われる。後場取引終盤には11月の投信概況が開示される。個別企業ではタイミー<215A.T>が25年10月期通期の決算を発表する。海外ではフィリピン中銀、スイス中銀、トルコ中銀が政策金利を開示するほか、米国で重要指標の発表が相次ぎ、週間の米新規失業保険申請件数、9月の米貿易収支、9月の米卸売在庫・売上高などが注目される。米30年債の入札も行われる。個別ではブロードコム<AVGO>の8~10月期決算発表が予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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