クエスト Research Memo(6):売上高、利益ともに2ケタ増収へ視界良好

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/23 12:16
*12:16JST クエスト Research Memo(6):売上高、利益ともに2ケタ増収へ視界良好 ■今後の見通し

● 2026年3月期の業績見通し
クエスト<2332>の2026年3月期の連結業績予想は、売上高16,860百万円(前期比12.9%増)、営業利益1,180百万円(同11.8%増)、経常利益1,240百万円(同11.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益845百万円(同10.1%増)を見込んでいる。上期においては、新拠点整備や子会社セプトの統合関連費用、人的資本投資など先行的なコストが利益を一時的に圧迫したが、これらは中期的な成長を見据えた戦略的投資であり、下期以降の収益拡大に寄与すると見込まれている。決算説明会でも通期見通しの据え置きが明言されており、下期にかけて利益が回復するシナリオを描いている。また、セプトの連結効果によるエンジニアリソースの拡充、半導体領域を中心としたコアサービス強化、さらにソリューションサービスの育成による付加価値向上が、通期業績を下支えする構造となっている。インフラ・セキュリティ関連の新サービス投入や共創案件の拡大など、事業ポートフォリオの再構築が進んでおり、通期の増収基調を支える主因となる見込みである。



■中長期の成長戦略

長期目標は売上200億円、時価総額250億円。中期経営計画の目標値は前倒し達成へ

1. 長期ビジョン「Quest Vision 2030」の描く未来像
同社は中長期ビジョンとして「Quest Vision 2030」を掲げ、2030年度(2031年3月期)までに売上高200億円超、企業価値250億円超という目標を設定している。本ビジョンは、社会と企業の双方に価値をもたらす「QCSV(Quest Creating Shared Value)」の考え方を中核に据えたものであり、企業の持続的成長と社会課題の解決を両立させる姿勢が鮮明である。この目標達成に向けて、同社は6つのコミットメントを定めている。

(1) さらなる探究・探求
新技術の獲得や創意工夫を通じて顧客とともに新たな価値を創出する。

(2) 働きがいにあふれる職場
従業員同士が学び合い、称え合う文化を通じて組織力を高める。

(3) 最も信頼される企業へ
顧客一人ひとりに寄り添ったサービス提供を徹底し、信頼性の高い企業としての地位を確立する。

(4) 持続可能な未来社会の実現
公共インフラや社会課題解決に貢献する。

(5) 売上高200億円超への挑戦
事業構造と組織体質の改革を通じて達成を目指す。

(6) 企業価値4倍(250億円超)への挑戦
企業資産の有機的連携によって高付加価値を創出する。

これらのコミットメントは、成長性・組織力・信頼性・財務成果の4つの観点を戦略的に連動させるものであり、実現に向けた整合性と実効性のある構造となっている。既に第1期(2021~2023年度)において、売上高の目標であった130億円に対し実績が142億円と上回り、計画遂行力の高さが確認されている。現在進行中の第2期(2024~2026年度)では高収益体質への転換が進められており、その後の第3期(2027~2029年度)を経て、最終フェーズにおける成長の加速が期待される。以上から、同社の長期ビジョンは、明確な目標設定と段階的な施策展開により、持続的な企業価値向上の実現可能性を十分に有していると評価できる。

2. 第2期中期経営計画(2024~2026年度)
2021年3月期に策定した中長期計画「Quest Vision 2030」の下で、2025年3月期より第2期となる中期経営計画が始動した。第1期ではM&Aを通じた事業基盤の拡張とともに、売上目標を上回る成果を上げたが、資本コストや株価を意識した経営の点では課題も残った。第2期では、資本効率を踏まえた収益性の向上を図りつつ、事業の変革と企業体質の強化、さらには人財及び技術への積極投資を進めている。同社はこれまで、顧客とともに価値を創造するICTソリューションの提供を通じて多様な産業に貢献してきたが、今後はこのコアサービスの深耕に加え、ソリューションサービスによってビジネスボリュームを拡大し、成長エンジンとする構えである。既に、セプトの子会社化によりリソース面の確保が進んでおり、ソリューションサービスへの傾注に期待がかかる。

第2期中期経営計画においては「2030年度の飛躍に向けた基盤の強化と着実な成長」を主眼に据えている。これを実現するために3つの重点戦略を設定した。

(1) 顧客産業・ポートフォリオ戦略
一次請け案件比率90%超、継続案件比率約70%の強みを生かし、重点強化領域(半導体、製造業)と安定成長領域(金融、情報通信、エンタテインメント)、社会課題解決領域(公共・社会、移動・物流、ヘルスケア・メディカル)の3領域を最適に配分し、需給動向に即した柔軟なリソース運用を行う。

(2) 事業構造戦略
工数提供型サービスからプロフェッショナルサービスやマネージドサービスへとシフトし、付加価値の高いソリューション型ビジネスモデルの構築を図る。既に、2026年3月期中間期においても顧客やパートナーとの共創案件を実行するなど、着実に育成プロセスを進めている。課題はあるものの今後順次成果に結びつくことが期待される。

(3) 人財戦略
既に述べたように、同社は2023年3月に、日本CSR協会から通信業界初の「サービスエクセレンスSE(ISO23592対応)成熟度評価で最高ランクである3つ星評価を得るなど、顧客の想定を超えた驚きのあるサービスを提供できる業者として広く社会的に認知されている。より一層優れた顧客サービスを展開できるよう、多様な人財が活躍できる職場環境の整備と、人的資本価値の向上に向けた制度改革・育成投資を強化する。

以上の3つの戦略を軸に、持続的成長と資本市場からの信頼確保を両立する経営体制の確立を目指し、2027年3月期における売上高168億円、営業利益率8.0%、ROE11%超といった財務目標を立てている。売上高については2026年3月期に達成する見込みであり、極めて堅調に進捗している。なお、第1期中期経営計画が好調に推移したことを踏まえ、第2期中期経営計画策定と同時に中長期ビジョンと「Quest Vision 2030」の営業利益率目標を1.5ポイント上積みし10.0%にするとともに、ROE目標を3.0ポイント上積みし14.0%に上方修正した。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)

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