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【QAあり】シマダヤ、2024年上場後の次なる一手 工場新設と海外展開強化で冷凍麺の国内外シェア拡大へ
目次

岡田賢二氏(以下、岡田):シマダヤ株式会社代表取締役社長の岡田です。本日はご多用の中、当社の個人投資家向けIRセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。
当社は2024年10月1日に、東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。株主をはじめ、多くのステークホルダーのみなさまのご支援の賜物と、心より感謝します。
本日のセミナーの内容は、スライドの4点です。順を追ってご説明しますので、どうぞよろしくお願いします。
会社概要

岡田:会社概要です。当社は創業93年の麺専業食品メーカーです。本社は東京都渋谷区恵比寿に、開発研究所は東京都昭島市にあります。生産は生産子会社3社、11工場で行っており、当社グループの従業員数は約1,300名です。
当社は「おいしい笑顔をお届けします」を経営コンセプトとして掲げています。
「おいしい笑顔」とは作る喜びであり、食べる喜びです。この経営コンセプトを実現するために、7つのビジョンを掲げ、役職員一丸となって、日々意欲的に取り組んでいます。
会社概要

岡田:当社は、2031年に創業100周年を迎えます。創業以来、業績は着実に拡大しており、直近2024年3月期の売上高は約390億円、営業利益は約33億5,000万円でした。
得意先は約1,000社あり、確かな品質と豊富な品揃えで、年間約8億食を製造・販売しています。
当社グループの特徴と強み

岡田:当社グループの特徴と強みは、麺専業として長い歴史の中で培った独自のバリューチェーンです。健康・簡便・高品質・買い置き・経済性・国産・環境と、7つのKの頭文字をキーワードに、商品開発や研究を行っています。
当社の開発研究部門は、品質保証を含めて70名体制の規模を有しており、新たな商品開発に向けて積極的な投資を行っています。
生産・品質面では、長い歴史の中で蓄積された大規模生産を実現する生産ノウハウと、高度な衛生管理技術に強みがあります。ゆでずに水でほぐすだけでおいしく食べていただける「流水麺」も、高度な衛生管理技術によって実現されています。
販売面では、消費者に近い視点を持った提案型営業が当社の強みです。家庭用では、長年のルートセールスにより構築した関係性を活かし、小売店の課題を捉えた販売促進・売り場レイアウトの提案を行っています。
業務用では、卸店との良好な関係を構築し、自社商品を使った数多くのメニュー提案や、外食店などの調理オペレーションの提案活動も実施しており、高い評価をいただいています。
これらの強みと商品の品質への評価により、高い顧客ロイヤリティを実現しています。昨今のコスト上昇で、2022年3月および2023年2月に全商品を対象とする価格改定を実施しました。販売食数を減少することなく価格改定を実現できたことから、価格だけではない品質やブランドが評価されたものと認識しています。
商品開発の歩み

岡田:当社は社会トレンドを取り込んだ、付加価値の高い商品開発を行ってきました。
家庭用チルド麺では、調理が簡便な「流水麺」、健康意識の高まりに応える「健美麺」、業務用冷凍麺では、外食・中食の幅広いニーズに応える商品を提供しています。
「流水麺」の開発

岡田:家庭用チルド麺を代表する「流水麺」についてご説明します。開発時の消費者アンケート結果で、チルド麺をゆでずに食べている方が約8パーセントいることに着目し、開発に取り組んできました。
「流水麺」は、加熱殺菌処理をしていませんが、当社の強みである高度な衛生管理技術により、安心しておいしく召し上がっていただけます。
関本圭吾氏(以下、関本):こちらの商品開発は非常に大事ですので、深掘りしていきたいと思います。潜在ニーズを捉えて開発してきたとのことですが、例えば「流水麺」ではどのような過程で開発が始まったのでしょうか?
そして、スライド右のグラフのとおり、販売金額をしっかり伸ばし、2019年をピークに一度は下がったものの、再び伸びてきています。開発から業績を伸ばしていく過程を、具体的に教えてください。
岡田:ここは非常にシマダヤらしいエピソードですので、丁寧にご説明します。
当時は夏場が赤字のため、冬場に稼いでいました。1987年に、広告代理店を通して大々的な消費者実態調査を行いました。「夏になぜゆで麺が売れないのか」というテーマでアンケートを取ると、「麺を食べたい」という意見がたくさんある中で、「暑いのにお湯を沸かしたくない」「麺をゆでたくない」との声がありました。
そこで、「みなさまはどのようにしてゆで麺を召し上がっているのだろう?」と、さらに深掘りしたところ、袋を開けて、そのまま水でほぐして、つゆにつけて食べていたのです。そのままつゆをかけて食べることは、麺専業メーカーから見ると、あり得ないことです。
その理由は1つ目に、衛生的によくないためです。2つ目に、食感がボソボソしておいしくないためです。わずか8パーセントでしたが、そのまま食べる方がいましたので、そこに潜在ニーズがあると考え、開発に取り組んできました。
非常に難易度が高く、時間も要しました。当時の研究所長は、「これは月に行くよりも難しい」「麺の刺身を作れというのか」と猛反対しました。麺専業メーカーとして、当時のマーケティング担当の強い思いで成し遂げ、具現化しました。
発売後も、なかなか今のような柱商品にはなりませんでした。ゆで麺のテレビ広告は珍しいのですが、テレビ広告を定期的に行っていきました。そして、検査しながら消費期限を1日ずつ伸ばしていきました。また、商品ラインナップ拡大の苦労などもありましたが、現在では柱商品になっています。
直近では原料をすべて国産化し、お客さまに非常に高い評価をいただいています。
関本:今の流れで非常におもしろいと思ったのは、開発キーワードの「7K」が、「消費期限を延ばして買い置きできるようにしよう」「国産対応しよう」といった特長を伸ばすような背景になっていることです。
もう1点お聞きしますが、発売した商品がすべてヒットするわけではないと思います。したがって、どのくらい開発するか、どのように選別するかといったプロセスも大事だと思います。
御社では、例えば、社内コンペなどを行うのでしょうか? それとも、キーマンのような方が「これで行こう」と言って取り組むことになるのでしょうか? 開発の種が出てくるプロセスについて教えてください。
岡田:当社はどちらかというと、マーケットインの考え方です。お客さまの要望やニーズを、お客様相談室を通じていただいています。さまざまな不満や、「もっとこうしたら良い」といったありがたい声がある中で、「7K」をキーワード・主軸に応えていく姿勢で、商品開発を行っています。
過去の失敗については、正直なところ、覚えていないほどたくさんあります。
ただし、そのような失敗を重ねたからこそ成功につながった例として、簡単・簡便と国産を組み合わせた「流水麺」、健康と国産を組み合わせた「健美麺」、そして高品質である「『もみ打ち』生冷し中華」などがあり、ロングセラー商品となっています。
今後は、大所帯の開発研究部門を活かし、プロダクトアウトによる市場創造型の商品開発にも取り組んでいきたいと考えています。
関本:シマダヤを利用している方は、「このようなものがいけるのではないかと思う」といった要望を送っていただけたらと思います。IRセミナーをご覧いただいている投資家の方が、シマダヤの業績を伸ばすかもしれないですよね。
岡田:ぜひお願いします。そうしていただけると、本当にうれしいです。
売上構成

岡田:売上構成についてご説明します。当社のコア事業領域は、家庭用チルド麺と業務用冷凍麺です。2024年3月期の売上構成比は、家庭用が62パーセント、業務用が38パーセントでした。
家庭用では主にチルド麺を取り扱っています。業務用では冷凍麺を取り扱っており、一部は海外に輸出しています。
シェア

岡田:当社の事業領域の市場規模とシェアをご説明します。業務用冷凍麺の国内市場規模は約820億円で、当社のシェアは約20パーセントです。僅差ですが、当社が国内シェアNo.1となっています。
家庭用チルド麺の国内市場規模は約2,300億円、当社のシェアは約10パーセントで、国内シェアはNo.2です。
関本:シェアについてお聞きします。市場シェアNo.1はすばらしいと思う一方で、食品をシェアで切り分けるのは難しいとも思います。他社との違いについて、価格帯や商品性でしっかり競合しているのか、棲み分けができているのか、このあたりの認識を教えてください。
岡田:家庭用チルド麺の市場では、各社が得意とするカテゴリが異なっており、結果的になんとなく棲み分けができています。
当社は、チルド麺市場の約4割を占める和風カテゴリ、具体的には、うどんとそばに強みを有しており、和風カテゴリでトップシェアとなっています。
一方、業務用冷凍麺市場で、他社は特定のカテゴリに強みを持つのに対し、当社はうどん・そば・ラーメン・パスタまで、バランスよく販売しています。当社1社で冷凍麺すべてが揃うことから、豊富な商品ラインナップとともに、お客さまの幅広いニーズに応えている点を評価いただいた結果、トータルでトップシェアになっていると考えています。
当社は、「非合理」を戦略に組み込むことで、差別化を図るユニークな企業だと考えています。
例えば、「流水麺」はおいしさを重視しているため、日持ちさせる加熱殺菌をあえて行っていません。そのため、計画生産ができないというマイナス面がありますが、おいしさにこだわった商品です。
冷凍麺については、業務用に特化することで、局地戦で着実に足元の利益を確保できるという特徴があります。
関本:結果として、御社は業務用冷凍麺でシェアNo.1を獲得し、家庭用チルド麺でもNo.2です。家庭用チルド麺では、和風のそばが強いのですね。よく理解できました。
業務用事業の概要

岡田:各事業の特徴をご説明します。業務用事業では、冷凍麺を外食・中食向けに、豊富な商品ラインナップときめ細かな営業体制で展開しています。飲食店はもちろん、レジャー施設や社員食堂まで、みなさまが日頃から利用している外食チェーンなどでも、当社の冷凍麺が使われています。
関本:業務用事業のユーザーは、どのようなところなのでしょうか? 大手企業なのか、それとも、品数を増やしにくいと思っている中小企業なのか、このあたりからお聞きしたいと思います。
岡田:業務用といっても、わかりにくいと思います。当社の業務用冷凍麺は、主に業務用専門の問屋・卸店を通して販売しています。また、全国にまたがる大手チェーン店とは、一部直接取引もしています。
業態では、一般飲食店です。小規模の個人店からチェーン店まで、また、産業給食・事業所給食・学校給食、レジャー施設などがあります。レジャー施設は、具体的にはゴルフ場や温浴施設です。お風呂上がりに麺を食べたい方は多いと思います。
さらには、サービスエリアや高速道路など、さまざまな業態で当社の冷凍麺が使われています。
外食市場について少し触れると、みなさまご存じのとおり、外食市場はインバウンド需要をはじめとする人流の増加で、非常に好調に推移しています。
しかし、その一方で、人手不足が深刻な問題となっています。このような中、業務用冷凍麺は、誰でも安定的な品質で調理ができるため、調理オペレーションの面などで拡大の余地があると考えています。
関本:この需要の背景についても、お聞きしたいと思います。基本的には、「おいしさを維持しながら現場のオペレーションを効率化したい」という簡便化のニーズが大きいのでしょうか? それとも、「ラインナップを増やしたい」といった要望もあるのでしょうか?
岡田:お客さまによって、ニーズは多岐に渡ります。さまざまなメニューを揃え、お店で完結できるようにしたいお客さまもいれば、「この人気メニューを育てよう」と考えるお客さまもいます。
そのため、一概には言えませんが、みなさまの一番の課題はやはり人手不足であり、どのように付加価値のあるメニューを提案し、お客さまに喜んでもらうかについて、悩まれているようです。
関本:その悩みに対して、豊富な商品ラインナップと、きめ細かい営業フォロー体制により、それぞれの課題を解決する冷凍麺を提供するわけですね。
岡田:おっしゃるとおりです。
業務用事業の概要

岡田:外食・中食では、メニューによってさまざまなニーズがあります。これらのニーズに応えるべく、当社の業務用冷凍麺は、メニューに合わせておいしく召し上がっていただけるよう、麺の太さやつゆに合った食感の商品を揃え、調理方法も提案しています。
関本:スライド右側のメニュー提案は、非常に興味深いですね。店頭でそのまま提供できるような商品提案は、御社にとって重要な営業手段、あるいはプロセスなのでしょうか? その場合、業績を伸ばすにあたり、製造販売というより、コンサルティングや営業ができる人材はかなり重要なのではないかと気になりました。
岡田:通常、多くの飲食店のお客さまにご利用いただいているため、業務用専門の卸店なくして商品を届けることはできません。したがって、40年近くに渡って築き上げてきた卸店との良好な関係は、当社の財産です。これが1つの前提となります。
しかし、ただ麺を導入するだけではなく、営業担当者は麺メニューの充実、おいしさ、幅、広がりを念頭に置き、「どうすれば充実するのだろう」と考え行動しています。これにより、お客さまとの信頼関係を構築することが、競争優位性につながると考えています。
また、当社は冷凍麺工場を4つ保有しており、比較的供給力が高いです。安定供給できることは、ユーザーさまの安心感につながっていると思います。
家庭用事業の概要

岡田:家庭用事業では、積極的な広告販促を行い、スーパーマーケットなどの小売店に営業活動を展開しています。
各店舗の日配食品コーナーではチルド麺を、冷凍食品コーナーでは冷凍麺を展開し、売り場レイアウトや販売促進の提案など、きめ細かな営業活動に取り組んでいます。
2025年3月期 第3四半期 決算のポイント

岡田:2025年3月期第3四半期の決算概要をご説明します。当第3四半期は、増収減益となりました。
減益ではありますが、物流費・製造労務費が上昇する中で、生産効率の改善や経費抑制の取り組みなどにより、営業利益・経常利益は、中間期決算発表時の業績予想を上回る見込みです。
関本:こちらは非常に重要なポイントだと思います。どの企業も、製造労務費・物流費の上昇はかなり深刻だと感じています。物流費は仕方がないことかもしれませんが、製造労務費の改善、例えば機械化や効率化に、御社はどのように取り組み、労務費上昇にどのくらい対応していけるのでしょうか?
岡田:人手不足の問題はお客さまだけではなく、作る側である当社も深刻です。その中で自動化・省人化、あるいは生産能力の増強が、非常に重要なポイントになると考えています。そこについては、まだまだ着手する余地があるかと思います。
直近では、例えば、出来上がった麺の箱詰め作業にロボットを導入したり、細かい粉を手で投入している部分を、大型サイロを使うことで自動化したりして、働きやすい環境を作っています。また、3食うどんは、外包装を自動化するなどの取り組みを行っています。
今後は、省人化・自動化・ライン増強・生産能力のアップが非常に大きなポイントになると思いますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。
関本:なるほど、よくわかりました。
岡田:売上高は313億円で、前年同期比1.7パーセントの増収となりました。第3四半期としては過去最高です。事業別では家庭用チルド麺が好調に推移し、業務用冷凍麺は前年並みの結果となりました。
営業利益は32億円で、前年同期比9.7パーセントの減益となりました。こちらは減益ですが、最高益の昨年に次ぐ、過去2番目の利益となっています。減益の主要因は、物流費・製造労務費などのコスト上昇です。
連結経営成績

岡田:連結経営成績です。親会社株主に帰属する当期(四半期)純利益は23億5,700万円、1株当たり四半期純利益は155円でした。
通期予想に対して利益額が上回っていますが、当社の事業の特徴として、家庭用チルド麺が夏型で上期に偏重するためです。
業績推移

岡田:業績推移です。過去5期を振り返ると、コロナ禍でも20億円前後の営業利益を確保してきました。コロナ禍において、業務用の外食需要が落ち込んだ際も、家庭用の内食を取り込み、環境変化に左右されず、安定した収益を上げることができました。
連結貸借対照表

岡田:連結貸借対照表です。資産合計は249億7,900万円で、前期末比で10億8,900万円の増加となりました。
純資産合計は178億6,400万円で、前期末比で20億2,600万円の増加となりました。これは主に、純利益の獲得によるものです。
商品価格改定

岡田:商品価格改定についてご説明します。当社事業の外部環境の変化により、原材料・資材・物流費・製造労務費などのコスト上昇が著しく、商品の品質と安定供給の維持を目的に、2025年2月1日納品分から商品価格を改定しました。詳細は、スライドに記載のとおりです。
関本:投資家からすると、収益の改善や売上は非常に重要なポイントだと思います。出荷の時期などを考えた時に、いつ頃のタイミングから、単価や粗利に価格改定の影響が出てくるでしょうか?
岡田:基本的には納品時です。したがって、価格改定を行った2月1日から影響が出ますが、2025年3月期への影響は軽微です。影響が出てくるのは来期以降となります。
関本:原材料・資材の価格高騰についてはすでに起きていて、今回の価格改定で吸収するということでしょうか?
岡田:おっしゃるとおりです。価格が上がった分に対して、効率化などさまざまな努力はしていきますが、どうしてもカバーしきれない分について、お客さまにお願いするかたちです。
創業100周年への長期ビジョン

岡田:当社グループの長期ビジョンと中期経営計画についてご説明します。当社は1931年の創業以来、食を通じた価値創造を続けてきました。麺のパイオニアとして、日本初の技術や商品を数多く生み出しています。
創業100周年にありたい姿

岡田:当社の創業100周年にありたい姿は、「麺食を通して価値創造を実現し人を笑顔にする会社」です。ありたい姿の実現に向けて、当社は麺食を通して、お客さまや社会、ステークホルダーのみなさまへ貢献していきます。
1つ目に、お客さまへの貢献において、7Kコンセプトをもとに開発された、確かな品質と豊富な品揃えの麺食を提供していきます。
2つ目に、社会への貢献においては、環境負荷の低減、人と地球の健康への寄与に取り組んでいきます。
3つ目に、働きやすい環境整備や、ステークホルダーのみなさまとの信頼関係の構築も強化していきます。
これらの重要課題に対応する戦略として、中期経営計画「Change 95」基本戦略を策定しました。
長期ビジョンと中期経営計画の位置づけ

岡田:長期ビジョンでは、「SCG 100(Shimadaya Change & Growth 100)」を掲げ、中期経営計画を前半3ヶ年と後半5ヶ年に分けて策定しました。
前半3ヶ年の「Change 95」を構造変革期、後半5ヶ年の「Growth 100」を成長期/新領域開拓期と位置づけています。
前半3ヶ年の中期経営計画「Change 95」の主な経営戦略は、家庭用事業の収益改善と業務用事業の売上拡大です。2つのコア事業の領域について構造変革を行うことで、より強固な経営基盤を築いていきます。
後半5ヶ年の「Growth 100」の主な経営戦略は、「Change 95」で築いた基盤のもとに、国内事業をより成長させていくことです。また、持続的成長に向け、冷凍麺比率の向上など、事業ポートフォリオの転換に取り組むとともに、海外など未開拓地域の展開に着手していきます。
中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)

岡田:今期から取り組みを開始した「Change 95」では、コア事業である家庭用チルド麺と業務用冷凍麺の深化と利益成長に挑戦し、収益構造を変革していきます。
売上高、EBITDAともに過去最高を計画し、冷凍麺の売上比率の向上を図っていきます。
近年の事業概要【業務用】

岡田:昨今の事業トピックスです。業務用事業では、コロナ禍後に急回復した冷凍麺市場の需要の取り込みに注力しています。
さらなる業績拡大に向け、冷凍麺工場の新設を決定しました。2026年の稼働開始に向け、準備をしているところです。これにより、当社の冷凍麺の生産能力は約10パーセント向上します。
関本:工場の冷凍ラインの新設についてうかがいます。2026年に工場が完成してからの立ち上がりは、どのようになるでしょうか? 認証などを含めて、少しずつになるのでしょうか? もしくは、すでに需要は相応に増えているので、作ればすぐに売れるような状況でしょうか?
岡田:現在、2026年夏の稼働を予定しています。ラインが揃い次第、約1ヶ月から長くても2ヶ月で試作等をして、本生産を行う予定です。リードタイムは比較的短いほうだと考えています。
関本:それ以降は、フル生産になりますか?
岡田:おっしゃるとおりです。
関本:稼働時期は夏とのお話でした。昨今の経済環境や、建設市場における人手不足、建設費の高騰などの影響がリスクとしてあると思います。それについて、御社は今どのようにお考えですか?
岡田:人手不足の影響で、完成時期が当初の予定よりも多少、後ろ倒しになりました。ただ、業者にも努力いただいており、現状では問題ないと考えています。
近年の事業概要【家庭用】

岡田:家庭用事業では、消費の二極化に対応しています。経済性需要には「太鼓判」などの3食入りの商品を、付加価値需要には「流水麺」シリーズを拡売し、販売食数をそれぞれ拡大させています。
また、当社のシェア拡大の余地がある西日本地区においては、限定商品も取り揃え、業績を拡大しています。
事業戦略

岡田:事業戦略についてご説明します。当社は、各事業の市場でのポジショニングから戦略を立て、売上シェアの拡大を目指しています。今後の国内市場の見通しとしては、チルド麺市場は縮小傾向、冷凍麺市場は拡大傾向と捉えています。
少子高齢化の進行により、チルド麺の国内市場は少しずつ縮小すると想定しています。平均気温の上昇による消費動向の変化に対応し、盛夏のみならず、年間を通した「流水麺」の販売を強化していきます。シェア拡大の余地がある西日本地区での販売にも、注力していきます。
関本:「Change 95」でも、冷凍麺の拡大について記載されています。一方で、冒頭のご説明では、家庭用では今はチルドが多いとうかがいました。冷凍麺市場の伸びしろは、どこにあるのでしょうか? チルドと冷凍では、市場の環境が少し違うのでしょうか?
岡田:共働き世帯の増加などにより、調理時間が短縮できることから、国内の家庭用冷凍麺市場での需要が高まっています。
その中で、大手の冷凍食品メーカーは、どちらかというと、具付きの調理麺に向かっています。しかしながら、当社は、実はアレンジができたり、作る喜びを感じられたりするような素材麺の需要に対して、十分に供給していないと感じており、家庭用冷凍にはまだ可能性があると考えています。
業務用冷凍については、豊富な品揃えでさらに拡大できると考えています。
関本:業務用冷凍については、効率化のニーズなども、もちろん追い風としてありますね。
岡田:おっしゃるとおりです。業務用冷凍の市場については、海外向けや、インバウンドで来たお客さまに提供するものなど、メニューを進めていく中で、市場の広がりを強く期待しています。
関本:国内と海外で違いはあるのでしょうか?
岡田:海外においては、生ラーメンを使ったラーメン屋が増えていますが、外食における冷凍麺の使用はそれほど普及していません。そのため、おいしさを着実に伝えれば、広がる可能性があります。
国内では認知されていますので、さらにメニューの広がりを提案していくことが重要だと考えています。
関本:家庭用チルドは縮小の傾向にあるかもしれませんが、シェア拡大の余地はまだあるわけですね。
岡田:おっしゃるとおりです。
関本:スライドに記載されている事業戦略は、「Change 95」の内容も含んでいると思います。2028年3月期以降の「Growth 100」のストーリーまでを考えた時にも、この方向性での成長を維持するのでしょうか? それとも、また新しい種などが出てくるのでしょうか? もう少し長めの目線では、どのように考えていますか?
岡田:スライドに記載しているとおり、やはり冷凍麺での可能性を感じていますので、冷凍麺の生産能力の増強に投資します。国内の業務用冷凍については、実は中四国以西でのシェアがまだ高くありません。このエリアの拡大に取り組みます。
加えて、従来取り組んできた海外輸出においては5パーセント未満です。これから、北米やASEAN地域での販売を強化していきたいと考えています。
関本:「Change 95」で挙げられた数値目標は、「過去最高益を」とのことでした。これをさらに伸ばした時に、どの程度の規模感や成長率を目指したいですか? おおよその目安でもよいので教えてください。
岡田:社内では数字を共有していますが、対外的にはお伝えしていません。精査した上でみなさまにお伝えできる時が来れば、あらためてお話ししたいと思います。
関本:承知しました。まずは、シェア拡大を含めて、収益性の改善と体制の構築に取り組むということですね。
配当

岡田:株主還元についてご説明します。当社の配当方針では、連結配当性向30パーセントから40パーセントを目安にして、安定配当を実施していきます。今期の期末配当は、1株当たり20円を予定しています。
加えて、今期は当社の上場記念ならびに株主のみなさまの日頃のご支援に感謝の意を表して、2025年3月31日を基準日とする1株当たり10円の上場記念配を実施する予定です。
株主優待

岡田:株主優待では、当社商品の詰め合わせを贈呈します。当社商品を味わうことで、事業内容の理解をさらに深め、ファン株主として末永く応援していただきますよう、よろしくお願いします。
私からのご説明は以上となります。
質疑応答:米の価格高騰が麺需要に及ぼした影響について
飯村美樹氏(以下、飯村):「米の価格が高止まりしたことで、麺の需要は伸びましたか?」というご質問です。足元の状況を非常に反映したご質問だと思いますが、いかがでしょうか?
岡田:米不足や米の価格高騰による影響を、数値で把握することは非常に難しいです。ただし、経済性志向に対応した「太鼓判」ブランドや、「3食焼そばソース付」などの3食商品、そして2週間以上日持ちのするものなどを中心に、売上が伸びています。
そのような意味では、米不足の中で麺を食べる頻度が増えていることを実感しています。
飯村:数値で見ることは難しいが、肌感覚では影響を感じているということですね。
岡田:おっしゃるとおりです。
質疑応答:今後の日本の食や農業のあり方に対する対策や取り組みについて
飯村:「食品の国内自給率が極めて低い中、昨今の気温の変化や為替の影響もあり、日本の食や農業のあり方が気になっています。食を司る企業として、今後どのような対策や取り組みをお考えでしょうか?」というご質問です。
岡田:当社の商品の主原料には、小麦粉やそば粉が多いです。付加価値の向上やSDGsの観点から、それらの国産化を進めています。現在、全体の仕入れの中で、小麦粉は約半分、そば粉は約4割が国産のものになっています。
また、当社の大きな主力商品である「流水麺」ブランドの主原料をすべて国産化することで、微力ながら、国内の食料自給率に寄与できると考えています。
飯村:応援したくなる気持ちがより一層増しました。
質疑応答:上場したことによる変化について
関本:「昨年上場されたことを受けて、上場前と後で何か変化はありましたか? 認知度や社内の状況など、何か感じていることはありますか?」というご質問です。
岡田:昨年10月1日に上場したばかりですので、外から見たシマダヤはまだ変わっていないと思います。
ただ、社内においては、従業員のモチベーションが非常に上がっており、少し自覚が出てきています。商品開発においても、もっとお客さまに笑顔を届けたいという気持ちが前面に出てきて、スピード感と活気が出てきたと感じています。
飯村:もともと御社は知名度がありましたが、さらに社内の空気が変わるのは、非常に良い効果ですね。
関本:他社では、上場していることが採用につながったり、社内で働く方のモチベーションの向上や離職率の低下などにつながったりするかもしれない、と聞きます。今後は、モチベーションアップと一緒にそのような効果も見えてくるとよいですね。
岡田:おっしゃるとおりです。大変期待しています。
質疑応答:新商品を開発する周期について
関本:「どの程度の周期で新商品を開発していますか? 周期、頻度、数などを教えてください」というご質問です。
岡田:当社は年度で大きく計画を立てています。春夏商品と秋冬商品というかたちで、年に2回、半期ごとに新商品を出すスパンです。
ただ、お客さまに本当に喜んでもらうものや、「7K」に確実に応えていくものについては、さらに時間がかかります。経営としては、1年でも2年でも、できるだけ早く対応したいと思いますが、市場を創造できるような本当に新しいものについては、商品の特性上、もう少し長期のスパンになります。
関本:「年間1つはこのような新商品を出す」とか「この程度の規模に育つ新商品を作る」といった、目標はあるのでしょうか?
岡田:例えば、家庭用チルド麺では、夏には「流水麺」や冷やし中華などがあります。当社は、昔はうどんが主力であり、年越しそばや和風麺が強いため、冬場に強いシマダヤでした。
最近は、中華系のラーメンや焼きそばなど、さまざまな種類があります。当社はそこが少し弱いため、良い商品、柱になるような商品をしっかりと作っていきたいと思っています。
業務用については、まさに現状、お客さまからいろいろなお声をいただいています。十分ではないかもしれませんが、それに対応していきます。加えて、「このようにすると、さらに楽になりますよ」とか「このようにすると、さらにおいしくなりますよ」という技術面を提案していきたいです。
質疑応答:長期ホルダー向けの株主優待の新設について
飯村:「つい最近、優待の新設が発表されました。今後、長期ホルダー向けの優待の新設も考えていますか?」というご質問です。
岡田:株主優待制度の導入については、私どもが想像していたよりも反響がありました。本当にありがたいことです。
しかし、当社は家庭用チルド麺と業務用冷凍麺が主体です。冷凍麺は、非常にかさばって冷凍庫が埋まってしまいます。チルド麺は日持ちがしないため、できる限り日持ちの長いものを選んでいます。
長期保有の方への優待については、優待制度を導入したばかりですので、今後そのようなお声があれば、社内で検討していきたいと考えています。
飯村:反響の大きさは、御社のファンの多さの表れだと思います。チルド麺は賞味期限や配送の関係でなかなか難しいかとは思いますが、「株主優待で『流水麺』がほしい」というコメントも届いていました。
質疑応答:今後の配当方針や設備投資などを踏まえた財務戦略について
関本:30パーセントから40パーセント程度の配当性向プラス株主優待が、今後の考え方のベースになるのでしょうか?
御社の場合、工場の投資が必要ですので、このようなところは設備投資に回していきたいというお考えはありますか? それとも、今回の冷凍ラインの増設で十分なため、もう少し果敢に増える余地があるのでしょうか? このあたりの財務戦略についての考えをお聞かせください。
岡田:財務戦略の詳細については、この場では差し控えます。ただし、11工場あるため、老朽化している設備もあります。老朽化している設備の更新も、安心・安全のためにしていかなければなりません。
また、なによりも人手不足に対応するための省人化・自動化に対して、これから投資が必要になると思っています。そのような意味では、これから設備投資が非常に重要になってくると考えています。
配当については、当社は環境の変化で大きく上がったり下がったりするような企業ではないと思っています。できる限り業績向上を第一に、安定した配当を、株主優待と併せて行っていくことが、私どもの使命だと考えています。
質疑応答:外国人などに向けた認知度を向上させるためのイベントの実施について
飯村:「成田空港などで、外国人のファンを増加させるための試食キャンペーンなどを行って、認知度を向上させると、より販路を拡大させやすくなると思います。御社は麺メーカーとして、イベントなどを行っているのでしょうか?」というご質問です。
岡田:正直なところ、不特定多数の方向けのイベントは、現時点では行っていません。家庭用チルド麺については、相当程度まで認知度が上がってきました。当初は「流水麺」を食べていただくなど、さまざまなチャレンジをしていましたが、現在は行っていません。
業務用については、やはり問屋が重要です。飲食店を招待した展示会のようなところでは、試食を行って確実にアピールしています。そこでサンプル要請をいただいて、サンプルとメニューの提案書をセットにして、営業が持っていきます。そのようなかたちで、販促活動を行っています。
飯村:なるほど、試食会で「導入しましょう」という流れになるのですね。
岡田:ありがたいことに、麺の試食を断るお客さまはいません。みなさまがブースで立ち止まって試食し、「ああ、これおいしいね」と言ってくださいます。
簡単に「これを買うよ」とは言ってもらえませんが、本当に真剣に検討していただきます。実際に食べていただくことが非常に重要だと感じています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:先ほど、ゆで麺をそのまま食べるのはかなり不衛生との話がありました。にもかかわらず、不衛生なまま販売されているのですか?
回答:「不衛生」というコメントは、1987年の消費者実態調査実施時の品質管理担当者によるものです(事実と異なる可能性がございます)。当時と比較すると、現在の衛生管理技術は格段に向上しており、当社グループにおいてはFSSC22000に取り組み、衛生管理には万全を期しています。ただし、「流水麺」以外のゆで麺は、ゆでずにそのまま召し上がる想定で生産していないため、消化されにくくお腹をこわす場合もあり、推奨していません。
<質問2>
質問:業務用うどんは、丸亀製麺のように店舗で粉から作るところが多い印象です。本当に伸びるのでしょうか?
回答:業務用外食市場はコロナ禍前以上に拡大しており、更にインバウンド影響による日本食人気が高まっています。その中で、うどん専門店については、冷凍うどんを使用されるケースはあまりないといえます。しかし、美味しく調理オペレーションが簡便であるという点において、外食チェーンや給食業態などの需要は非常に高いと考えています。
<質問3>
質問:他社との協業した配送コスト削減などにも取り組まれているのでしょうか?
回答:業務用はすでに共同配送を行っています。今後は、家庭用の共同配送にも取り組んでいきます。また、その他の物流体制への取り組みとして、パレット輸送などにも着手し、先を見据えた投資を行っています。
<質問4>
質問:以前は冬場に稼いで夏場は赤字だったというお話ですが、「流水麺」のヒットでそれが逆転したということでしょうか? 第3四半期時点で通期予想利益を超過しているのなら第4四半期単体で赤字になる計算ですが、実際はどうなのでしょうか? 慎重に見ているためでしょうか?
回答:当社は、「流水麺」や冷し中華類のシェアが高く、上期偏重型の売上構成になっています。特に第4四半期のトップラインが最も低く、2023年度第4四半期の売上比率は20.9パーセントです。現時点の合理性に基づいた予測により、当社としては確実に達成可能な通期予想利益をお示しし、堅実な経営に努めていきます。
<質問5>
質問:昨今の原材料費、物流費、人件費などの高騰の影響はどの程度でしょうか? 価格転嫁などの対応は取られるのでしょうか?
回答:経営を取り巻く環境として、原材料は過去の水準から見れば高止まり、物流費や製造労務費はコスト上昇傾向が続くと考えています。これらを受けて、当社は2025年2月1日より価格改定を行いました。当社としては、今後も必要に応じて価格転嫁の実施を検討していきます。
<質問6>
質問:筆頭株主のメルコグループはどのような保有方針ですか? 同グループはPC周辺機器の会社というイメージで、いずれすべての株を売却するのではと思ってしまいます。
回答:メルコグループの保有方針については当社ではお答えしかねますが、当面は当社の安定株主として継続保有いただけるものと認識しています。
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