S&P500月例レポート(2025年4月配信)<後編>

<前編>の続き

雇用関係

 ○2月のADP全米雇用統計では、民間部門雇用者数が市場予想の16万2000人増に対し、7万7000人増となりました。サービス業の雇用が、新規雇用のうちの4万1000人を占めています。

  ⇒転職しなかった労働者の賃金上昇率の中央値は前年同月比4.7%(1月から横ばい)、転職者の賃金上昇率の中央値は同6.7%でした(1月は6.8%)。

 ○2月の雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想の16万人増を下回る15万1000人増となりました。1月の非農業部門雇用者数は当初発表の14万3000人増から12万5000人増に下方修正されました。

  ⇒2月の失業率は市場予想が前月から横ばいの4.0%だったのに対し、4.1%に上昇しました(12月は4.1%、11月は4.2%、10月と9月は4.1%、8月は4.2%、7月は4.3%、6月は4.1%、5月は4.0%、4月は3.9%、3月は3.8%、2月は3.9%、1月と2023年12月、11月は3.7%でした。2020年2月は3.5%でしたが、同年5月には13.3%となりました)。

  ⇒労働参加率は1月の62.6%から2月は62.4%に低下しました(12月と11月は62.5%、10月は62.6%、9月、8月、7月は62.7%)。

  ⇒2月の週平均労働時間は事前予想が34.2時間への増加だったのに対し、前月から横ばいの34.1時間となりました。(12月は34.2時間、11月は34.3時間、10月と9月は34.2時間、8月は34.4時間、7月は34.2時間、6月、5月、4月は34.3時間)。

  ⇒2月の平均時給は、事前予想通り前月比0.3%増(前月の35.87ドルから35.93ドルに増加)となりました。1月は当初発表の同0.5%増から同0.4%増に下方修正されました(12月と11月は同0.3%増、10月は同0.4%増、9月は同0.3%増、8月は同0.4%増)。2月は前年同月比では4.0%増となりました。1月は当初発表の同4.1%増から同3.9%増に下方修正されました(12月は同3.9%増、11月と10月は同4.0%増、9月と8月は同3.9%増)。

 ○1月のJOLTS(求人労働異動調査)によると、求人件数は市場予想の750万件を上回る774万件となりました。12月は当初発表の760万件から750万8000件に下方修正されました。

 ○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の186万2000件から185万6000件に減少しました。

  ⇒週間新規失業保険申請件数(当初報告通り):

   →2025年3月6日発表の週間新規失業保険申請件数:22万1000件

   →2025年3月13日発表の週間新規失業保険申請件数:22万件

   →2025年3月20日発表の週間新規失業保険申請件数:22万3000件

   →2025年3月27日発表の週間新規失業保険申請件数:22万4000件

企業業績

 ○2024年第4四半期の決算シーズンが終わりました。営業利益は予想よりも好調で、2025年後半と2026年も四半期での過去最高を更新する見込みです。

  ⇒499銘柄が2024年第4四半期の決算発表を終え、そのうちの373銘柄(過去最高水準の74.7%)で営業利益が予想を上回り、498銘柄中306銘柄(61.4%)で売上高が予想を上回りました。

  ⇒2024年第4四半期の営業利益は過去最高であった2024年第3四半期の記録を更新し、前期比3.5%増、前年同期(不況だった2023年第4四半期)比13.6%増となりました。

  ⇒売上高は前期比で1.4%増となり、過去最高であった2024年第3四半期の記録を更新しました。前年同期比では3.8%増でした。

  ⇒2024年第4四半期の営業利益率は、2024年第3四半期の11.80%と2023年第4四半期の11.00%を上回る12.04%となりました(1993年以降の平均は8.49%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

  ⇒2024年第4四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は12.0%となっています。この割合は、2024年第3四半期は13.6%、2023年第4四半期は12.6%でした。

 ○2024年通年の利益は前年比9.3%増となり、これに基づく2024年の株価収益率(PER)は24.0倍となっています。

 ○決算期がずれている企業17社が2025年第1四半期の発表を終え、そのうちの12銘柄で営業利益が予想を上回り、16銘柄中11銘柄で売上高が予想を上回りました。第1四半期については、営業利益は過去最高となった2024年第4四半期比で3.0%減、前年同期比で8.7%増になると予想されています。

 ○2025年通年の利益は前年比14.7%増が見込まれており、予想PERは21.1倍となっています。

 ○2026年通年の利益は前年比14.6%増が見込まれており、予想PERは18.4倍となっています。

配当金

 ○2025年3月の配当支払額は前年同月比24.8%増となりました。2月は同8.2%減、1月は同12.5%増でした。年初来では前年同期比7.3%増となっています。2024年通年の配当支払額は前年比6.44%増でした(2023年は同5.05%増、2022年は同10.81%増)。

  ⇒3月の配当支払い金は前年同月の1株当たり5.79ドルから7.22ドルに増加しました。

  ⇒2025年第1四半期(年初来)の配当支払い金は前年同期の1株当たり18.06ドルから19.37ドルに増加しました。

  ⇒2025年3月までの12ヵ月間の配当支払金は1株当たり76.15ドルと、2024年3月までの12ヵ月間の70.82ドルを上回りました。

   →2024年通年の配当支払い金も、前年の1株当たり70.30ドルから74.83ドルに増加し、過去最高を更新しました。

  ⇒2025年3月は、増配が16件、配当開始が0件、減配が0件で、配当停止は0件でした。2024年3月は、増配が15件、配当開始が0件で、減配が1件、配当停止は0件でした。年初来では、増配が128件、配当開始が2件、減配が3件、配当停止が1件となっています。

   →2024年は、増配が342件、配当開始が8件、減配が15件、配当停止が2件でした。

   →2023年は、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件でした。

   →2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件、配当停止が0件でした。

 ○3月の増配率の中央値は、2月の6.67%、1月の5.73%から4.71%に低下し、年初来では6.52%となっています。2024年通年では6.25%でした。3月の平均増配率は2月の8.75%から7.98%に低下し(1月は7.97%)、年初来でも8.66%となっています。2024年通年の平均値は8.31%(いずれも2倍以上になった銘柄は除く)でした。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。

 ○2024年通年の配当支払い額は前年比6.44%増加しました。これにより、S&P500指数の株主への実際の年間の現金配当は15年連続で増加し、13年連続で過去最高を更新しました。

 ○2025年に関して:

  ⇒通常、大半の企業が事業年度を終えて株主総会に備える第1四半期は、配当の伸びが年間で最も大きくなります。株主総会の前ほど配当を引き上げるのに恰好のタイミングはありません。2025年第1四半期も、配当の伸びは持続し、従来期待されたていた水準は大幅に下回ったものの、経済の不確実性を踏まえれば予想並みとなりました。政府間・国際レベルで不確実性の増大に歯止めはかかっていない模様で、これが配当の伸びを抑制しました。企業の将来に対するコミットメントの度合いは消極的になっているようです。

  ⇒世界の政府の政策を巡る現在の不確実性の度合いと、雇用とインフレを巡る個人の懸念を踏まえると、企業は引き続き進展する様々な変化を評価し、これが生産、設備投資、雇用、あるいは配当であれ、将来に対するコミットメントの縮小につながる可能性があります。

  ⇒政府の行動と交渉におけるスピードを踏まえると、企業が様子見のアプローチを取ることで、2025年第2四半期の配当の伸びは抑制される可能性があります。ただし、年央までに政府間・国際レベルでの解決策が見出されるとの基本シナリオを想定すると、2025年下半期の配当の伸びは過去平均を上回るかもしれません。2025年通期のS&P500指数の配当支払額は6~7%の伸びが予想されます。これは2025年に入る前の時点の8%の予想値から低下していますが、年間の配当支払額は過去最高を更新する見通しです。対して、2024年は前年比6.4%増、2023年は同5.1%増、2022年は同10.8増%でした。

インデックス・レビュー

◇S&P 500指数

 株式市場では引き続き不透明感が根強く、不安定な地合いに終始したものの、3月のS&P500指数をみると、活発な取引が続きました。トランプ政権が「米国解放の日」と呼ぶ4月2日と翌3日は、これまでに言及されてきた関税と相互関税が発動される可能性があるため、株式市場にとって極めて重要となるでしょう。これまでのところ、市場は繰り返される関税政策の変更にそのつど反応してきましたが、同時に市場関係者はこうした変更の大半を交渉過程の一場面と捉えています。しかし、少なくとも現時点では、当日になれば関税が実際に発動され、その影響が顕在化し始めるため、一部の産業では在庫状況の確認に着手することになるでしょう。しかしながら、市場がなお考えているように今後も交渉は続けられていくとみられます。

 関税の導入直後の影響と予想される大々的なマスコミ報道によって不透明感は増幅されるでしょうが、たとえ詳細が明らかにされなくても、より具体的な関税率(と政策)が6月までに確認できることを市場は期待しています。そうなれば企業は行動計画(生産量や雇用水準、設備投資の見直しやサプライチェーンの調整)の策定に取り掛かることができます。その時まで、市場ではパズルのピースにひとつひとつ反応していくような動きが続き、現状の活発な取引と高ボラティリティにも変化はみられないでしょう。

 S&P500指数は3月に5.75%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス5.63%)、月間としては2022年9月の9.34%下落以降で、最悪の下落率となりました。2月は1.42%の下落(同マイナス1.30%)、1月は2.70%の大幅上昇(同プラス2.78%)でした。2025年第1四半期の年初来の3ヵ月間では同指数は4.59%の下落(同マイナス4.27%)でした。対して、2024年第1四半期は10.16%の大幅上昇、2023年第1四半期は7.03%の上昇、2022年第1四半期は4.95%の下落でした。2024年通年では23.31%上昇(同プラス25.02%)しました。2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。

 3月は11セクター中2セクターのみが上昇しました。2月は11セクター中6セクターが上昇、1月は10セクターが上昇しました。3月のパフォーマンスが最高となったのはエネルギーで3.75%上昇しました(年初来では9.30%上昇、2023年末比では11.83%上昇)。パフォーマンスが最低だったのは一般消費財で、9.02%下落しました(同13.97%下落、同11.09%上昇)。

 マグニフィセント・セブン銘柄は全て、年初来のリターンがマイナスとなりました(平均でマイナス15.80%)。S&P500指数の年初来のトータルリターンはマイナス4.27%でしたが、マグニフィセント・セブン銘柄を除くとプラス0.50%となるはずでした。3月のリターンも全体ではマイナス5.63%でしたが、7銘柄を除くとマイナス2.59%となります。とはいえ、2022年末比でのリターンに占めるマグニフィセント・セブン銘柄の割合は54%となっています(2023年の年初から2025年3月末までのS&P500指数のリターンは51.14%ですが、マグニフィセント・セブン銘柄を除くと23.7%でした)。

 3月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は1.71%と、2月の1.09%から上昇(1月は0.91%)しました。年初来では1.29%となっています。2024年通年は0.91%で、2023年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.41%)。3月の出来高は、2月に前月比10%増加した後に、同9%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では23%の増加となりました。3月までの過去12ヵ月間では前年同期比5%増加しました。2024年通年では前年比2%減、2023年は同1%減、2022年は同6%増でした。

 3月は1%以上変動した日数は21営業日中12日(上昇が4日、下落が8日)で、2%以上の変動は2日ありました(上昇が1日、下落が1日)。2月は1%以上変動した日数は19営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数が60営業日中21日で(上昇が8日、下落が13日)、2日で2%以上変動しました(上昇が1日、下落が1日)。2024年通年では、1%以上変動した日数は50日(上昇が31日、下落が19日)で、2%以上変動した日数は7日(上昇が3日、下落が4日)でした。

 3月は21営業日中19日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日は7日で、1日で3%以上変動しました。対して2月は1%以上の変動が19営業日中9日で、2%以上変動した日は2日でした。年初来では1%以上の変動が37日、2%以上の変動が9日、3%以上の変動が1日となっています。2024年通年では1%以上の変動が83日、2%以上の変動が11日、2023年は1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日でした。

 3月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数を大幅に下回りました。3月の値上がり銘柄数は154銘柄でした(平均上昇率は4.32%)。2月は248銘柄が値上がりしました(同6.06%)。3月に10%以上上昇した銘柄数は13銘柄(同12.74%)で、2月の40銘柄(同14.18%)から減少し、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(2月は1銘柄)。一方で、値下がり銘柄数を見ると、3月は349銘柄が値下がりしました(平均下落率は7.09%)。2月は255銘柄が値下がりしました(同7.45%)。3月に10%以上下落した銘柄数は85銘柄(同14.54%)で、2月の72銘柄(同15.69%)から増加し、2銘柄(2月は5銘柄)が25%以上下落しました。2024年通年では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数が332銘柄(平均上昇率は28.17%)、値下がり銘柄数が169銘柄(平均下落率は16.07%)でした。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム