2026年、AI相場のゲームチェンジを示す意外な本命銘柄 [大山季之の米国株マーケット・ビュー] <新春特別企画>

配信元:株探
投稿:2026/01/03 10:00

◆25年相場を動かした3つのファクター

 昨年の米国株市場を総括すると、3つのファクターが思い浮かぶ。1つ目は「K字回復」で、ワニの口が開いた時のようにトレンドが二極化し、その傾向が進んだ年だったということだ。二極化は年初のトランプ大統領の就任からスタートして、1年を通して米国経済では富裕層と低中所得者層、株式市場ではAI(人工知能)関連のハイテク銘柄とそれ以外の銘柄の格差が拡大している。

 2つ目は言うまでもなく、トランプ関税だ。関税によって物価高が進むのではないかと懸念されたのだが、結果としてそれほどの混乱は生じなかった。4月の株価暴落以降、株式市場は持ち直し、二極化が進んでいるとはいえ消費動向も堅調に推移している。経済指標で見てもPPI(生産者物価指数)は上昇しているが、企業がリストラや効率化によってコストを吸収したことで、CPI(消費者物価指数)は当初想定されたほどには上昇していない。これはひとえに、企業がサプライチェーン間でコストを負担し合い、ある程度、消費者への価格転嫁を抑えてきたことによる。半面、その弊害が表れ始めたのが労働市場だ。11月の失業率が2021年9月以来の高水準となる4.6%まで上昇し、大手ハイテクやコンサルティング企業の大規模リストラが報じられるなど、市場の想定以上に悪化している。

 3つ目は「3年目のAI相場」だ。1月の「ディープシーク・ショック」による調整後、4月のトランプ関税とそれ以降のいわゆる「TACOトレード」を経て上昇基調に戻り、9月からは高騰局面に入った。結局、1年を通してみれば、相変わらずAI相場の熱気は冷めていない。主要指数の推移を見ても、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は年初来の上昇率が40%を超え、15%超のS&P500種指数を大きく上回っている(12月29日時点)。

 では26年の米国株市場はどのような動きを見せていくのだろうか。昨年同様にAI銘柄を中心とした上昇相場が続くのか。ここで興味深いのは、エヌビディア、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラの「マグニフィセント・セブン(M7)」と、それ以外のS&P500構成銘柄493社(S&P493)のEPS(1株当たり純利益)成長率の予測データだ。

 いま、市場関係者のコンセンサスによると、M7のEPS成長率は25年の約21%から26年には約19%へと減速する見通しになっている。一方、S&P493は25年の約7%から26年には約11%へと上昇すると予測されている。つまり、依然としてM7のEPS成長率は高いが、来年は減速する可能性があるのだ。半面、M7以外の企業は、前年の伸び率以上に成長すると見られている。この予測から見て取れるのは、ここ数年にわたりAI関連のハイテク主力銘柄に集中してきた利益が、来年以降、それ以外の企業にも分散し始める兆しが現れているのではないかということだ。注目すべきはM7以外の企業なのだ。

 年末にかけ、ハイテク株の影響が少ないダウ工業株30種平均もしっかりしていたし、主要指数と比べて出遅れていた中小型株指数のラッセル2000も、12月11日に史上最高値を更新した。昨年のようなトランプ大統領就任といった大きなトピックはないが、米国全体の景況感は決して悪くなく、例えハイテク株が減速したとしても、米国株全体を見れば、M7以外の企業の確かな利益成長などもあって、明るいトレンドが続くというのがいまのマーケットの見方なのだ。

◆"AIバブル崩壊の震源地"、オラクル信用不安の正体

 そんな中で、マーケットがいま、感じている唯一にして最大の懸念材料と言えば、やはりAI企業の過剰投資のリスク、端的に言えばオラクルに対する信用不安の問題だ。同社は9月にオープンAIからの3000億ドルに及ぶ巨額受注が報じられ、株価が急騰したもののその後、前例のない180億ドルの起債を発表すると株価は一転して下落の一途を辿った。12月10日(現地時間)に発表された同社の26年5月期第2四半期(25年9-11月期)決算も振るわず、いまでは "AIバブル崩壊の震源地"扱いされるまでに評価を落としている。

 実際、10月以降、株価の下落と反比例するかのように同社のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は拡大。5年物CDSスプレッドは9月以前の3倍以上の水準で取引されている。市場参加者たちは、それだけ同社の社債に信用リスクを感じているということになる。

 同社の何が問題視されているのか、改めてマーケットの懸念を整理してみたい。通常、投資家たちが企業を見る際に重視するのは将来の成長性、言い換えればEPSがこれからどれだけ伸びていくかというP/L(損益計算書)の部分だろう。だが今回問題視されているのは、P/LではなくB/S(貸借対照表)の部分だ。オラクル側の言い分は、巨額の受注残によって数年後に大きな利益を獲得するというものだが、焦点はそこではない。利益を獲得するためにオラクル自身が巨額の投資を必要とし、そのための資金を自社が稼ぐキャッシュフローだけでは賄えず、マーケット(債券市場)に頼らざるを得なかった同社の財務内容に信用不安を感じているのだ。

 さらに今回の決算報告書に、2480億ドルに及ぶデータセンター関連のリース契約が記されたことも投資家の懸念を深めている。他のクラウド大手企業と異なり、自社のデータセンターが手薄なオラクルは、巨額の受注案件に対応していくためにはリースに頼らざるを得ない。だがこのリース契約額はビッグテック各社の2倍以上という突出した水準で、B/Sのさらなる悪化をもたらす可能性がある。

 そんな状況下で、耳目を集めたのが「ブルームバーグ」で報じられたJPモルガン・チェース・アンド・カンパニーのクレジットアナリスト、エリカ・スピア氏の提言だ。同氏曰く、「Show me Story!(証拠を見せろ!)」。具体的には、現在の同社の格付け「BBB」を維持するための方策を示すこと、配当を減らすこと、借り入れのレバレッジを明示すること、エクイティファイナンス(株主資本の増加を伴う資金調達)を実施することなどを求めている。設備投資額が膨れ上がる中で、資金調達手段をほぼ債務に依存し、しかも成長の道筋を明示できていない同社に対して、信用不安の解消に努めるよう迫ったのだ。

 こうした一連の動きを見て改めて個人的に感じたことがある。そもそも、オラクルが良くも悪くもAI相場の中で存在感を高めたのは、これまでの同社では考えられない規模の巨額受注が明らかになってからだ。ところが根本的な問題は、発注側が未上場企業であるため、事業の進捗状況が外部からは見えないところにある。だからオラクルがいくら説明しても、マーケットは不安を拭うことができないのだ。

 そこで少々大胆かもしれないが、26年のAI相場を展望するうえで大きなターニングポイントとなるかもしれない、極めて重要なトピックをお伝えしたい。現在、市場を覆っているAI相場の停滞感を払しょくすることにもつながるだろうし、米国株で資産を拡大させようと本気で考える個人投資家にとっても、小さくないヒントを与えられるのではないかと思う。

◆AI相場の"ゲームチェンジ"を実現するのは、あの会社のIPO

 もったいぶった書き方になってしまったが、それはズバリ、オープンAIのIPO(新規株式公開)だ。いまのところ、同社のIPOスケジュールは27年、早くても26年後半ではないかと言われている。だが同社は、これだけのAI相場に対する信用不安を生み出した張本人でもある。信用不安は好決算にもかかわらず理不尽に売り込まれてしまったブロードコムのように、AI企業全体へと伝播しつつあり、このままではオープンAIの事業にも跳ね返ってきかねない。だから、26年の早い段階にIPOを前倒しせざるを得ないのではないか、と読んでいるのだ。

 必ずしもIPOが決定しなくても、スケジュールが報じられる程度でも構わない。IPO前の大規模な資金調達が行われても良い。とにかく同社のIPO・資金調達が具体化するだけで、AI相場の空気は一変するのではないか。同社の事業が確実に進展していることを対外的に示すことができるし、株式市場からも実際に資金調達ができると証明されれば、AI相場全体を覆っている信用不安は一気に解消されるはずだ。まさにAI相場の"ゲームチェンジ"となるだろう。

 もちろん、同社の株式公開だけでは、いわゆる"AIバブル論"の払しょくには繋がらないかもしれない。AIバブル論の根底にある、AIが実際の社会でどのような役割を果たすのかというテーマが明らかになるまでには、もう少し時間を要するだろうし、いまの段階でそれを議論するのは、言ってみれば"神学論争"のようなものだ。

 AIバブル論についてもう少し言及すると、いまの状況を2000年前後のドットコム・バブルと重ねる見方も少なくない。だがマーケット・コンセンサスによるM7の26年の予想PER(株価収益率)の平均は30倍を切っている。エヌビディアに至っては来期、27年1月期の予想PERは22倍に過ぎない。不思議なもので、一方、優良企業ではあるが成熟産業の典型でもあるウォルマートやコストコ・ホールセールは40倍前後。併記して比べてみれば、エヌビディアの株価のバリュエーションに「あまりプレミアムが乗っていない状態」にも見えてしまうし、割安と言っていい水準なのだ。

 少なくともAI相場の主力銘柄のバリュエーションは、ドットコム・バブル時期のシスコ・システムズのような異常な状態にはなっていない。"根拠なき熱狂"とは程遠いのが、現在のAI相場の実態だ。やはり、いまAI企業に向けられている懐疑的な見方の焦点は、事業の成長性ではなくクレジット・リスクにある。したがってそれが解消されれば、必然的にバブル論の声も小さくなっていくのではないだろうか。

◆26年の米国株は「ナイキ」のロゴマーク型に推移、注目すべきセクターと銘柄は

 では次に、26年の米国株マーケットの大まかな流れを予測してみたい。スポーツシューズで知られる「ナイキ」のロゴマークは、ご存じだろう。左側が沈んで、「シュッ」と右肩上がりに伸びていく、あのマークだ。このような曲線で、全体株価が推移していくというのが、26年のイメージだ。当面はAI関連銘柄への信用不安を覆すことができないだろうし、例によって米政府のつなぎ予算問題なども再燃するかもしれない。だが、春先なのか、年初のいまなのかは分からないが、いずれにしても早い段階で底を打つ。そして、中間選挙を控えるトランプ政権の消費刺激策や、マーケットフレンドリーな政策もあって、年後半へ向けて右肩上がりで上昇していく、というシナリオだ。起爆剤となるのは、やはりオープンAIのIPO(もしくは大規模資金調達)のアナウンスだろう。

 ではそんな中で、具体的にどのような銘柄に注目すべきなのだろうか。M7の中で個人的に最も面白いと思うのはテスラだ。PERは割高だし、株価のボラティリティ(変動率)も依然として高いが、同社の事業は自動運転や蓄電池、ロボティクスなどいずれも時代を先取りしていて、正しい方向に進んでいる。フィジカルAI関連の本命企業と言えるだろう。

 次に挙げたいのが、25年を通して株価が3倍化したマイクロン・テクノロジーだ。SKハイニックス(韓国上場)やサムスン電子(同)の後塵を拝し、昨年の前半まではAI相場のわきに追いやられていた感があった同社だが、世界的なメモリー不足と需要の拡大によって一躍、メインストリームに躍り出た。PERも割安で上値余地は大きい。メモリー増産の流れは今年もさらに勢いを増すだろうし、同じくメモリー需要の拡大によって評価が高まっているアプライド・マテリアルズ、ラム・リサーチ、KLAなど、前工程の半導体製造装置メーカーとともに、引き続き注目すべきだろう。

 AI相場の延長として捉えれば、昨年同様データセンター周りの電力需要を担うGEベルノバやキャタピラーといった企業にもマーケットの視線が集まるはずだ。両社とも昨年一年間で株価はかなり上昇しているが、AI需要が引き続き拡大しているのかどうかを測る羅針盤的な存在でもあり、今後も事業の成長が続く可能性が高い。

 最後に個人投資家の皆さんに、あえて今年最も注目すべき銘柄を挙げておきたい。ここまでお読みいただいた方の中には、ピンとくる向きも少なくないかもしれない。それはオラクルだ。先述した通り、オープンAIからの大型受注とそれに伴う起債が信用不安を呼び、株価が急落した同社だが、だからこそ投資チャンスが大きいと感じる。ただ、それは今ではない。株式マーケットを覆う信用不安が晴れた時、つまりオープンAIのIPO・資金調達スケジュールが具体化したタイミングにチャンスが訪れる。26年の米国株マーケットの最大の関心事は、このトピックに尽きると考えるが、その時こそ、売られ過ぎてしまっている同社は、一気に再評価される可能性が高い。マーケットの動向に注視しながら、固唾を呑んでその時を待ちたいと思う。


【著者】
大山季之(おおやま・のりゆき)
松井証券マーケットアナリスト 

1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、10年バークレイズ証券、12年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案、自社株買い、金融商品組成などに関わる。現在は松井証券のマーケットアナリストとして、米国のマクロ経済分析や企業、セクターの分析等を行う。



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